29 どいつ豆

どいつ豆「どいつまめ」
(マメ科インゲンマメ属)
主な産地 天理市、奈良市、生駒市
栽培面積(1ha)
 

 インゲンマメの野生種は中央アメリカ高原に分布しており、栽培はこれらの地域から始まったとされています。日本への伝来は、承応3年(1654)に黄檗宗の開祖として江戸時代の前期に活躍した僧侶である隠元禅師が中国から持ち込んだとされており、この隠元禅師の名に因んでこの名が付けられました。
 関西では通称「サンドマメ」と呼ばれているインゲンマメだが、その名のとおりシーズンに三度は種を蒔き栽培することが可能で、収穫期間が長く家庭菜園用に適していることから全国各地で栽培がおこなわれています。日本で一般的に普及が始まるのは、欧米から多くの品種を導入した明治初年からで、野菜としては比較的新しい部類になります。
 食する方法も、種を食用とするもの、莢を食用とするもの、また栽培方法も蔓を伸ばして実をつけるものに、蔓なしのものと実に多くの品種が存在しています。代表的なものとしては、その莢の形状がドジョウに似ていることから通称「ドジョウインゲン」と呼ばれる莢を食用にする品種、そして北海道で広く栽培されている「大福」などの乾燥種実用の品種、また豆の色模様から「鶉豆(うずらまめ)」と呼ばれている品種などがあります。
 このように莢ごと食用にするものと、煮豆用に用いられるインゲンマメですが、ここで紹介するどいつ豆は若莢を食用とする品種です。外見は、一見すると細長く平たい莢の形状で、ドジョウインゲンと似ています。なぜこのような名が付いたのかは正確には不明ですが、「この美味しい豆をつくったのは、どいつ(どの人)」といったところから名づけられたとの一説もあります。 
 「美味しくて作りやすいから」と奈良盆地の農村部で自給用の作物として作り継がれてきたどいつ豆。独自の風味をもったやわらかい肉質の莢をゆがいて、胡麻と和えると、絶品の大和のお総菜ができあがります。どいつ豆はインゲン豆の中では独特の癖のない風味をもっており、奈良県農家の自給用品種の中では人気の高い野菜です。