09 五ケ谷ショウガ

 
五ケ谷ショウガ

「ごかたにショウガ」

  ワサビやミョウガとともに、日本の食文化に馴染みの深い香辛料として欠かすことのできない野菜にショウガがあります。 ショウガといえば、おろして薬味、刻んで炒め物と和風、中華風といったイメージが強いのですが、ジンジャークッキー、ジンジャーティー、ジンジャーエールといったように西洋でも定着している野菜の一つです。
 そしてその歴史を紐解いてゆきますと、ショウガはショウガ科の多年草植物で、原産地はベンガル湾を中心としたインドから東南アジアにかけての熱帯アジアといわれています。 ヨーロッパでも利用の歴史は古く、1世紀のころから薬用として、その後香辛料として広まり、13~14世紀にはその利用が一般的となりました。また中国でも古くから栽培がおこなわれており、現在でも広東省が主要生産地となり世界最大の生姜の生産地となっています。日本への伝来は3世紀以前に中国の呉(ご)の国から伝わったとされています。
 日本で栽培されているショウガの品種は大別すると大ショウガ、中ショウガ、小ショウガの3つに分類することができます。生姜というと一つの種類に思われがちですが、用途に応じたいくつかの品種が存在しています。 生寿司に添えて食するのに欠かせない香辛料の「がり」に利用されるものには大株で色が淡く、辛味の少ない大ショウガが利用されています。 大ショウガは他にも菓子用としても利用されておりその代表的な品種には印度ショウガなどが挙げられます。 中ショウガは普段、薬味のショウガおろしとして冷奴やお刺身に添えるショウガのことを指し、代表的な品種としては三州が挙げられます。
 このようにショウガにはいくつかの品種が存在していますが、奈良県でも市場で高い評価を受けているショウガが受け継がれています。清酒発祥の地として知られている奈良市菩提山町の正暦寺に隣接する椿尾(つばお)町は、昔から良質のショウガの産地として知られています。この地で栽培されるショウガは小ショウガといわれる種類に属します。 椿尾の小ショウガは上記の品種と比較しても強い辛味をもっているので、その特性を生かした香辛料として高級料亭などでも利用されています。
  俳人の高浜虚子が、「生姜湯に顔しかめけり風邪の神」、と詠んだ詩がありますが、昔から日本人はショウガのもつ効用を理解し、「あめ湯」の中にショウガを加えた「生姜湯」をカゼ薬とするなどして利用してきました。