01 野川芋


野川芋

「のがわいも」
(ナス科~原産地:南米のアンデス地方) 産地:奈良県の野迫川村。 日本への伝来は慶長年間(1596~1615)、オランダ人によってジャカトラ(現在のインドネシアであるジャカルタ)から伝わりました。ジャガイモの名の由来はジャガトライモから略されて定着したとされています。

 大和盆地が田植えで忙しい季節は、春先に植えつけた新ジャガの収穫の時でもあります。奈良県の伝統野菜を紹介していくこのコーナー、今回はフライドポテトにポテトチップス、肉じゃがにポテトサラダといったように和洋折衷問わず様々な日本の食の分野に溶け込んでいるジャガイモを紹介したいと思います。
 この野菜のふるさとは南米のアンデスといわれ、インカ文明で知られるペルーとボリビアの間にまたがったアルティプラノ高原チチカカ湖が発祥地と考えられています。ヨーロッパへは15世紀末の新大陸発見以降に知られるようになり、その後アイルランドなどの北ヨーロッパでは主食にされるなど、世界的にも主要な食用作物として広がっていきました。
 我が国への伝来は慶長年間(1596~1615)ですが、本格的な栽培が始まったのは明治時代以降となります。国内の代表的な品種としては、北アメリカが原産で1907年頃に函館の川田竜吉男爵がイギリスから持ち帰ったとされていることから男爵と呼ばれる「ダンシャクイモ」があります。ジャガイモといえば男爵イモを思い浮かべるほど国内で普及しているこの芋は、黄白色の球形をしており、粉質な肉質と食味の良さからポテトサラダや粉ふきいもに好適とされています。
 またアイルランドで生まれ、大正時代に導入された「メークイン」は長卵形で、肉質が緻密な粘質であることから煮崩れしにくく煮物に向いているとされています。国内で生産されている品種はこの二つが多くを占めますが、少し個性的なものとしては、赤い外皮が特徴の「アンデスレッド」や、小粒ながら強い甘みをもつ「インカのめざめ」と呼ばれる品種などもあります。
 そして、ここで紹介する奈良県のジャガイモは「野川芋(のがわいも)」という品種です。この芋が育ててこられたのは奈良県の西南端に位置し、古くから開けた信仰の山である高野山と隣接する野迫川村です。この野迫川村では、地元の郷土料理研究会が中心となり地元の食文化を見直す試みが進められており、郷土料理を通してスロバキア共和国との交流をはかるというユニークな活動も行われています。この地で継承されてきた野川芋は美しい桜色の外皮に、しっかりとした食感が特徴です。この芋は塩や漬物の汁とたっぷりの水とともに芋を炊き上げる「パチ芋」と呼ばれる地元の調理法で利用されてきました。水気がほとんどなくなるほど炊き込まれた芋は固くなって、芋の中にできた空洞が口の中に入れるとパチッと音がすることからパチ芋と名づけられたそうです。