03 紫とうがらし


紫とうがらし

「むらさきとうがらし」
(ナス科~原産地:南アメリカの熱帯地方)産地:奈良市、天理市などの奈良盆地。とうがらしの仲間は南アメリカの熱帯地方を原産としています。日本への伝来は1592年に豊臣秀吉の朝鮮出兵の折に種が導入されたという説と、1542年にポルトガル人がたばことともにもたらしたという二説があります。

 蒸し暑かった梅雨が終わると、キュウリにナス、そしてトマトといった夏野菜の本格的な収穫が始まります。今回の大和伝統野菜ものがたりは、その個性的な色彩が目を惹く夏野菜の一つである「紫とうがらし」を紹介してみたいと思います。
 このコーナーでは、細くて長い形状が特徴の「ひもとうがらし」をご紹介していますが、紫とうがらしも、ひもとうがらし同様に辛味の少ないとうがらしの仲間。その名の通り、最大の特徴はその外見の色彩。ナスを想わせるような紫色は、ブルーベリーなどに含まれるアントシアニンという色素が多く含まれているためで、とうがらしの中では珍しいといえます。
 奈良市の米谷町では、100年以上も前から栽培されてきたといわれ、郷土食としては佃煮や炒め物として利用されてきました。伝統野菜の魅力は、その土地の気候風土が生み出した個性的な色に形、そして食感や風味です。紫とうがらしも食した者にしかわからない独特の食感と風味をもっています。私のお気に入りの料理は炒め物ですが、種が柔らかいうちに収穫した紫とうがらしを、お好みの鶏肉、豚肉、牛肉と一緒に炒めると、醍醐味であるその食感と風味が引き立ち、ご飯のおかずに良し、お酒のともに良しと、とても収穫が楽しみになります。
 以前は、自家菜園の作り手以外には、奈良県内でもほとんど知られることのなかった紫とうがらしですが、平成19年に、「大和野菜」として認証されることで、少しずつその名が知られるようになってきました。最近では、道の駅など各地の直売所などでも目にする機会が増えてきました。また、県内の種苗店では春先に苗を購入することができ、春に植えつけた苗は、上手に育てれば、夏の初めから秋の終わりまでの長い期間に、非常に多くの収穫をもたらしてくれます。自らで育てて、自らで食するといわれている大和の伝統野菜。家庭菜園をされている方には是非ともお勧めしたい大和の伝統野菜の一つです。