07 結崎ネブカ


「ゆうざきネブカ」
(ユリ科ネギ属)生産地~奈良県川西町
「ネブカ」とは江戸中期の方言辞典である「物類称呼」(1775年)によると、葱を表す関西の方言とある。結崎ネブカは九条ネギに代表される葉ネギの一種で、かつては大和平野で広く栽培された歴史をもち、特に結崎村(現川西町)で多く栽培されていたことから、「結崎」の名が冠せられた。5月下旬に採種された種を6月中旬に蒔く。収穫は8月から翌年3月まで続く。

 世阿弥による観世能発祥地として知られる川西町を舞台に、古くから栽培されてきた葱の一種に「結崎ネブカ」があります。大和盆地のほぼ中央に位置する川西町には一つの伝説が口伝として伝わっています。それは「室町時代のある日のこと、一天にわかにかき曇り、天から怪音とともに寺川のほとりに一個の翁面と一束の葱が降ってきた。村人は能面をその場にねんごろに葬り、葱をその地に植えたところ、みごとに生育して結崎ネブカとして名物になった」という内容。
 結崎ネブカとは、かつては大和平野で広く栽培され、特に結崎村(現川西町)で多く栽培されていたことから、「結崎」の名が冠せられた九条ネギに代表される葉ネギの一種で、柔らかな食感と甘みが特徴。その柔らかさゆえの折れやすい特徴は市場流通では見栄えが悪いことから栽培は衰退し、結崎ネブカは絶滅したかに思われました。ところが同町に住む宇野正増さんが、自家消費用として結崎ネブカの栽培をおこない、先祖代々からの種を受け継いでいました。結崎ネブカを広く復活させるため、宇野さんが守ってきた種を、生産農家と川西町商工会、そしてJAならけん川西支店が力を合わせた取り組みが実を結び、平成15年度に「奈良県まほろば地域づくりコンテスト奨励賞」を、翌年度には「毎日・地方自治大賞奨励賞」を受賞します。そして平成17年には奈良県のブランド野菜の証である「大和野菜」の認証を得ました。川西町の新たな特産品としての地位を確立した結崎ネブカは、同時に「地産地消」という地域の食材を見直す機運のなかで、地元の学校給食や食育などにも取り扱われることにより、川西町の人々に地域を見つめるまなざしも提供しています。
 「柔らかくて折れやすいので、栽培の手間はかかるけど、美味しいので家族で食べるためにつくり続けていた」と語る宇野さん。宇野さんが受け継いできた一握りの種は、新たな川西町のシンボルとなって、町の歴史と文化を語り続けています。